
要旨:
- 政策の抜本的転換が必要である。
- 食料自給率の数値目標だが、市場を無視して自給率の低い麦や大豆への生産誘導で数値を上げたところで、食料の安全保障が確保されるわけでもなく、農業が活性化されるわけでもない。
- 世界の発展途上国が食糧難で苦しむなか、日本は減反で生産を抑制し、世界にその異質ぶりを晒した。
- 現在のコメ生産は年間800万トンほどだが、コメは潜在的に1200万トンの生産が可能。
- しかし、作付け面積が5ヘクタール以上の農家は2%にしか過ぎず、0.5ヘクタールに届かない農家が42%にのぼる。小規模農家ほど高齢化が進んでいる。
- 1ヘクタールに達しない農家の農業所得は赤字だが総所得は300〜500万円。農業所得が総所得の5割を超えるのは5ヘクタール層からで、20ヘクタール以上では農業所得は1100万円を超える。
- でも面積あたりの経営費は規模が拡大しても大きくは下がらない。
- 小規模・赤字でも稲作を続ける理由は、自家消費用の生産のためとか、相続税・固定資産税の節税のためとか、将来の農地の転用収入のためとか、単に農業は趣味だからとか。
- 規模拡大しても現状は経営農地が分散しているので効率的経営がなされていない。
- 100ヘクタール規模の農家の育成が急務である。そのための経済特区化を含む提言をまとめた。内向きでは未来はない。
上に添付した表は農林水産省のもの(クリックで拡大)。現代ニッポンでは、ままごとみたいな「日曜園芸」非効率農地でも農家が「食えてしまう」ところに諸悪の根源がある(消費者と納税者がその高いコストを負担している)。以前NHKが「イギリスの農業はたくさん補助金を貰える、ニッポンも見習え」みたいな「農村媚びマクリ」番組をやっていたが、イギリスでは一番困窮している零細農家といっても農地の規模は100ヘクタール。応援演説をぶたせるために呼ばれたゲストの金子勝が、NHKの意図に反して「それにしても広いですね〜」と妙に感心していたが、問題の本質はここにあるのである。
ニッポンの極小規模農家が農業をやめない理由は、現行制度では零細農地を所有し続けることに強い金銭的インセンティブが働くからだ。この制度を廃止する(あるいは機能しないような状況を作り出す)ことが先決ではないか。
2 件のコメント:
全農はやっぱりすごい。散人先生おっしゃる効率のよい大規模農業を海外でやり(社員80人?で輸入トウモロコシの30%を担う。また、自国の耕地面積のほぼ3倍を確保などなど……)、関税は消費者に負担させつつ、国内では農村に多くの有権者をキープ。強いってこういうことかと、ある部分尊敬。地産地消なんぞばかばかしいかぎり。当方東京近郊の都市貧民で趣味は釣り、食い物は安いが一番です。
--------------------------
●穀物戦争―「恐怖の収集商」全農
ピンチにチャンスを見いだす国:海外から穀物を調達する日本(上)
http://www.chosunonline.com/article/20090126000015
ピンチにチャンスを見いだす国:海外から穀物を調達する日本(下)
http://www.chosunonline.com/article/20090126000016
全農はすごいですね。ここまで巨大化しながら独占禁止法の適用から除外されている。「協同組合」は独占禁止法の治外法権なのです。やりたい放題。
コメントを投稿